桑原央治(東京都立大島高校)
私自身が伊豆大島の噴火で避難を経験したが、その時に地震や火山の知識を持っていないことがいたずらに恐怖をあおり立てるということを痛感した。防災機関はいろんな形で情報を提供してくれているが、それを受け止める力がないと理解できない。理解できない情報はいくらあってもゴミになるばかり。理解する力を若い子供たちに持って欲しい。自分の足元でどんなことが起こっているのかを理解すると、自分の生き死にもちゃんと見つめられる。その機会の第1歩になってくれれば。
小山真人(静岡大学教育学部)
東京に5年いた時をのぞいて、静岡県に生まれて静岡県に育っているが、高校生の時に駿河湾地震説がでてきてその後の対策が進んだ。子供のころはすごいことが起きそうで、どきどきわくわく楽しかったが、生活者になると、いつもいつも地震防災で脅かされてすごく苦痛。阪神の時は驚いて少し身の回りの防災対策をしたが、また放ってある。私ですらそうなのだから、他の県民はそのぐらいの意識しかないだろうし、20年たって風化している。それはやり方がおかしいと思う。今の防災教育は、やたらにこういうことが起きそうだぞと学者が脅かす、学者のデータで行政が脅かす。みんな脅して防災意識を維持させようとしているが、それでは限界が来ている。何がいいかと考えると、自然の成り立ち、自然の風景を楽しんで、その風景の中に秘められた意味を考えて見つけだしていく。自然をいつくしんで、自然と親しむことによって、自然のスケールが人間の時間スケールと違うことや、一生で体験しないようなことを自然が起こしてきたことを良く理解していれば、非常にまれな大きな災害が起きても、対処する知恵とか心構えが自然のうちに作られると思う。子供たちが自然と楽しみながら、知らないうちに学ぶことができれば。
山崎晴雄(東京都立大学理学部)
活断層は地震を起こす原因の断層。多くの人が名前はご存じ。実態はかなり難しい。自然をいかに見ているか、積み重ねもいる。それをやさしく説明するのは困ったが、ずれの現物を見てもらったうえで、断層の外観が入ればさらに理解が発展することができるのではと、山の上で地形も見てもらった。断層地形だけをみるのではなく、自然がさまざまな作用によって、山の噴火とかによって作られている。その中に断層もあって特殊な地形ができている。クイズ方式でやって本当に分かってもらったかどうか不安だが、地形には作用の結果があって、いろんなプロセスがあって、それによって地震のことも分かるんだということが伝われば大成功だったと思う。
活断層があることをどう防災に結びつけるかは、あまり研究者は考えていない。怖い怖いと行っているが、雨が降ると洪水は起きるが雨が降らないと困るのと同じように、断層が日本の自然地形を作っている。その中に住んでいる。避ける、逃げるわけにいかない。みんなにぜひ知って欲しい。小山さんの自然観に共鳴しているので誘ってもらった。基礎知識の普及は大切。行政の方も、活断層があると言われてどう対応するか困っている。そこを皆さんと知恵を出し合って一緒に考えていきたい。痛みをみんなで共有できるようにしていきたい。
山岡耕春(名古屋大学理学部)
地震の予知においてもできるできないとか、学者がどう言うかという部分と行政との間にあまりにもギャップがあり、そこに悩みが多かった。そこでは、一般の人がどれだけ地震を知っているかが重要で、小中高の若い人を対象にした行事は面白そうだと思って参加した。
伝えられたかどうかは分からないけど、地震が起きることと日本列島がここにあることと、地球が進化してきたことは裏表で切っては切れないこと。日本列島に住む人間が知っていなければならないこと。そういう観点で地震を見て欲しいというのがいちばん大きなメッセージ。
行政と研究者の間には、まだ大きなギャップがある。行政は白か黒か言って欲しいというが、サイエンスは白か黒かは言えない。この間をどう埋めるかが世の中に決定的に欠落している。うまくいっているように見える火山噴火予知でもかなり研究者の山勘と行政側のえいやの決断でうまくいっているところがある。そこをうまくつなぐ学問が必要で、それがこれから進歩しないと、いつまでも行政と研究者がうまくつながらない。研究者は行政にこびを売らない方がいい。できるだけ客観的な情報を出すべき。それ以上やるのはうそをつくことに近づくから。客観的な情報だと漠然としすぎて何をしたらいいか分からないのが現状。でも、それが事実なのだからそれを活かすのが正しいやり方だが、今はその正しいやり方ができていない。これは、最大の問題で誰かがやらなければならない。理学だけではダメで、もう少し人文社会の研究者がやって欲しい。
中川和之(時事通信社神戸総局)
私は裏方を中心になってやった。阪神大震災をきっかけに、それぞれの立場でこれまでのやり方が十分だったのか、防災に対して十分だったのか、違うのではという思いがあった。十分ものが伝えられていたのか、メディアの立場で考えた。大事なことは、人を育てること。分かっている人をいろんなところに増やすこと。それによって、災害に強い地域、文化、社会ができてくる。日本はいろんなところに災害があるが、それと生活は切っても切れなくて、人間が住みやすい場所を提供もしてくれていることは取材を通じて学んできた。災害を引き起こす自然とおりあって生きていくにはどうしたらいいか。子供が自分で気付いていくようなプログラムにしたかった。地域でボーイスカウトもやっていて、ゲームなどについて多少のノウハウがあったので、そういうやり方も使わせてもらった。
もともと、桑原さんからいただいたメッセージは、災害をイメージできる感性をどう持っているかが大事ということ。人間、怖い、危ないと言われ続けると、考えるのがいやになる。そこから先ブラックアウトして、専門家だけにお任せし、何かの際に被災者=被害者になる。それではおかしい。これまで何が起こってきたのか、これから何が起ころうとしているのかを少しでも考えるきっかけを作ってもらえば。今回は丹那断層を使ったが、それぞれ全国の各地にいろんな災害があって、ひとつひとつ足元を見つめていけば何か見えてくるものがあるだろう。そこから、そこに生きていく人がどうやって生きていくのか、どういう地域を作っていくのか考える力を養っていくきっかけになるのでは。
相原延光(神奈川県立小田原城内高校)
子供たちは授業で座学をするより、実験をするほうが目の輝きが違う。実験は大好き。それが再現されたので、満足している。午前中に野外で観察して、火山や地震の風景を観察して、あそこにあるんだなと目で見て確かめた。何となくイメージ化されているが、実際に断層はどうやってできたのかと思っていたと思う。午後、食事をして気分転換して、関心が高まったテーマの流れの中でできたと思う。実際の地震は、地下の自然現象なので、もう一度再現することはできない。実験は何回でもやれるし、誰でも満足感があることをと材料を考えた。調べてみると、粘土を使ったりとか、材料に何を使うかが大きな問題である。大阪府立教育センターの岡本義雄さんが身近な食材を使った実験を提案され、やってみた。小麦粉とココアを押し固めて、横からの力で変形する過程で断層ができる。圧力をかけていてもなかなか変形しない。ある時すっとずれて断層ができる。また力を加えているとすっとずれる。エネルギーがたまっていってまた瞬時に動く。自然界では1000年に1回とかの長いタイムレンジで起きることだが、それが短時間で観察でき、納得できる。家に帰っても再現できる。お父さんやお母さんと一緒に断層を作ってみよう。いろんな材料でやってみて違った褶曲ができるかもしれない。ここでの実験が家庭にも広がっていくことも狙い。みなさん、楽しんでやっていたのではと思う。
私は火山学会の会員で、このイベントは小山さんから誘われ、現場の子供たちの動きも理解しているだろうと言われて参加した。高校の受験、大学の受験の勉強の中で授業が形骸化して面白くなくなっている。非常に生き生きとした活動があると知り、こういう社会教育、こういうイベントの中で新たな発見ができる、ボランティアで参加してそこから社会に広げていけると思い参画した。
中丸明子(平塚市立神田中学校)
地層の液状化実験は試行錯誤の結果。いろんな方法はあるが、起震機の実験などは作業が繁雑。子供に実験をさせる上では、1人1個、必ず自分のもので確かめられるということを追及したかった。ペットボトルはいくらガシャガシャやっても壊れないし、揺れも伝わりやすい。もちろん、必ずしも本質的ではなく、横から波が来るし、下から波が来るのが正確だと言われるが。揺れて水がじわっと上がってくる。水を入れる、砂を入れる、それを揺らすという液状化の3つの条件の説明が武村さんからあったが、私のやり方は間違っていなかったのかなと、自分に対する評価。現象が出てくると面白い。ああ、水が出てきたという感動を伝えたいなと。住んでいる平塚市は、液状化が危険な川沿いの地域なので、あの実験がやりたくて、こちらでも使わしてもらった。
大学や大学院で地震の勉強をしてきたが、中学で地震のことを学べるのは時間数で4時間ぐらいしかない。いろんなところで自分の持っているものを生かせればと参加した。
武村雅之(鹿島建設小堀研究室)
地震の揺れ、どこでどのように揺れるかと言うことを研究しているが、活断層に興味が持たれており、活断層が動くか動かないかは社会的な関心事になっている。では、動いたときにどこでどう揺れるかが大事。どのくらい自分の家が揺れるのかが最も大事なのに、それが抜けている。子供にも、地震で断層が動いたときに、どこでどう揺れやすいのかを理解して欲しいなと液状化のことを話した。液状化することで揺れが弱まる要素もある。それをきちんと理解してくれるといいなと思った。
参加した理由は、民間会社にいて揺れを予測すると、それに耐える建物を造るか作らないか、つまりどのくらい費用をかけるかが日常的に問題になる。自分が建てないときは世の中のものが強くなればいいと言うが、自分が金を出して建てるときにどのくらいの金を出すのか、出す価値があるのかが、大変重大な問題。滅多に起きないので、耐震設計しても大地震に役立つ確率は低い。しかし、起こったらものすごく損失が大きい。やっかいな現象。それには判断が必要だが、判断には正確な知識を持っていることと、ある種のイマジネーションの二つが大変重要な要素だと思っている。子供の頃から正しい知識と、ものを見たときの想像力を身につけて欲しいなとつくづく感じている。地震学会のいろんな委員会に参加していて、桑原さんとも親しいこともあり、学校教育委員会を作って欲しいと呼びかけた一人でもあって参加した。災害は、学会や科学者の枠組みだけではとらえきれない。広い分野が関わらないとできない。こういう活動を通じて、我々自身がいろんな立場の人とつきあう中で防災を考えていくのが重要だと考えている。
棚井郁夫(函南町教育委員会)
きっかけは、小山さんが教委で行っている生涯学習の講座でお付き合いがあったこと。その打ち合わせでこの話が出て、普段聞けない専門家の方の話が聞けると言うことは、函南の生涯学習の一環につながると全面協力をすることにした。
行政と大学の先生や学会の人ら民間の人との催し物。個人的な意見になるが、生涯学習も自分たちだけの枠の中で考え行うだけでなく、広く門戸を広げることで、民間の方のご協力を得ることで、よりよいものを行っていくことが必要ではと、新しいチャレンジの気持ちをもって協力した。
偉そうなことを言える立場ではないが、行政、公という枠を考えずに、肩の力を抜いて門戸を広げることによって、いろんな分野のいろんな方の存在がわかると思う。そういう方の専門的な知識・アイデアをボランティア的にご提供してもらうことによって、行政の予算もかからない、中身の濃い催しができるということで、行政の役割である住民へのサービスができるのでは。協力しようとしてくれる人は大勢いるのでは。
函南町には丹那断層を記念公園的にした施設がある。広く全国にPRすべきという提案も小山さんからいただいており、こちらからお願いするような形でここで実施していただいた。町外にPRできる施設があまりないので、丹那断層を皆さんにご案内できるような施設にということをPRするということもあって協力させていただいた。
宮嶋衛次(北海道立理科教育センター)
非常に画期的な試みである点は、通常の防災教育は話を大人にしておしまいなのに、今回は小中校生を対象に実験、観察を交えながらやっていること。どうやっているのか見たくて参加した。北海道でも、地震が起きそうなところ、火山でも噴火しそうなところはたくさんあるが、そういう地域で話だけでなく、観察したり、実験したりして、心に残るような、長続きするようなことをやっていく必要を感じた。
静岡県内高校教諭のひとり
地学クラブの生徒6人を引率して参加させてもらった。きっかけは、阪神大震災の後に活断層が話題になったが、実際に話には聞いているが生徒たちは断層を見たことがないし、実態は全くわかっていなかったと思う。実際に見せたいというのが一番最初の動機。また、地震による被害とかに対して、どう高校生が取り組めばいいか考えて欲しいと思って参加させた。
静岡は、東海地震が起きるかもしれないと言われているので、高校生も災害が起きたときに中心になって活動しなければと思っている。実際その時にどう動けばいいか、まだ何も指針が作られていないのが現状。震災時の高校生の活動を参考にして、具体的なマニュアルなどを作っていかねばと思っている。