地震はなぜ起きるのか

名古屋大学・理学部 山岡耕春

 地震はこわいですね。とつぜん、前ぶれもなくゆれるのですから。では、なぜ「とつぜん」「前ぶれもなく」ゆれるのでしょうか? また本当に「前ぶれ」が無いのでしょうか? 今日はそのことについて考えましょう。


 昔の人は地下の大なまずがさわぐために地震が起きると思っていました。明治になって、日本に新しい科学が入ってきてからもいろいろな説がありました。マグマが爆発するからだとか、地下の空洞がつぶれるからだとか、いろいろな説がありました。でも、今では「地下深くの岩がこわれるときの振動」が地震の原因だということがはっきりわかっています。


 地下深くで岩がこわれる時には、こわれる部分はある1枚の平面になって、その面を境にして両側で岩がすべります。このようなすべりを断層と言います。これは地表で岩がこわれる場合とは異なっています。このことがわかったのはそんなに古いことではありません。1891年の濃尾地震の時、1930年の北伊豆地震の時に、人々は自分の目で断層を見ましたが、これはゆれたためにずれたのだと思いました。けれども今では断層のずれが地面をゆらす原因だということがはっきりしています。火山でおきるごく一部の地震をのぞいて、すべての地震は断層のずれによって起きます。そのずれが非常に大きな場合にだけ、断層が地表にあらわれて、私たちが見ることができるのです。


 さてそのような断層はどのようにしてできるのでしょうか。岩石が壊れるのですから誰かが力を加えているからに他なりません。それは誰でしょう。それは地球そのものです。46億年昔に生まれてから地球はどんどん進化してきました。進化は地球の中で岩石がゆっくりと流れることによってなされてきました。この流れがマントル対流と呼ばれていることはご存じのみなさんも多いと思います。地球の表面もどんどん進化してきました。火山活動でできた陸地の子供が、マントル対流にのって日本のようなところにはき寄せられて、最後にはアメリカやアフリカのような大陸ができるのです。そのはきよせる力が地震を起こしているのです。地震とはまさに地球が進化していることのあかしなのです。


 そのような力を受けて地震が起きるのですが、地震の起き方には大きく分けて2種類あります。1つは海溝のようなプレート(マントル対流)が沈み込む場所です。東海地震や関東大地震がこのような地震です。このような場所では日本列島がプレートによって地球の中に引きずり込まれようとしています。けれども日本列島はマントルよりも軽いために引きずり込まれまいと抵抗します。そのために、ある時突然に日本列島がプレートからはなれて、はねあがります。このときに大きな地震が起きるのです。もう1つの場所は、日本列島の内部です。日本列島はマントルの力によって、ぎしぎしと押されています。その力に耐えられなくなった場所がこわれて地震を起こします。それが活断層の地震です。1930年の北伊豆地震はそのような地震です。


 さて、そのように岩石がこわれて地震が起きる前に「前ぶれ」があるのでしょうか。またその「前ぶれ」を私たちが知ることができるでしょうか。海溝で起きる地震も日本列島内部で起きる地震も、同じ場所で繰り返し岩石が壊れると考えられています。これを断層がすべると言いますが、断層の面にはでこぼこがあるためにすべりにくい場所とすべりやすい場所が混ざっていると考えられています。大きな地震は断層がひろい面積にわたってすべる時に発生し、その直前にはすべりやすい部分がゆっくりとすべりはじめると考えられています。このすべりが前ぶれの原因で、前ぶれのすべりをとらえることが地震の予測につながると考えています。このようなすべりは地震の発生する直前(1週間前くらい)から発生すると考えられていて、東海地震の地域には世界一の観測網が設置されています。地震計いがいにも、地面の伸び縮みをはかる歪計、宇宙技術を用いたGPSが24時間監視をしています。


 さて、本当にこれで予知ができるのでしょうか。残念ながらこのような近代的な観測網を使用して予知に成功した例も失敗した例も無いのでわかりません。また前ぶれかもしれない「すべり」をとらえても、地震の起きなかった例もあります。仮に観測機器が変化をとらえたとしても、それが地震の前ぶれかどうかを判断するのは簡単ではありません。成功と失敗を繰り返しながら進歩するのが科学技術だからです。でも少なくとも、なにもしなければ決して地震の発生を予測できないことは確かです。


 地震の正確な予知は前ぶれのみで可能になります。前ぶれが発生する前の正確な予測は不可能です。○○月××日に地震が発生するといううわさが時々あるようですが、このような予測は地震の性質から原理的に不可能で、100%うそですから、みなさんは信用しないでください。


 では将来の地震が全くわからないかと言えばそんなことはありませんが、予測はもう少しおおざっぱになります。むかし起きた地震を詳しく調べて次に起きる地震を予測する方法です。東海地震もそのようにして予測されました。日本の南岸は100年〜150年間隔で非常に大きな地震が発生しています。その様子を調べると未来の地震の発生をおおざっぱに予測できます。最も新しい地震は太平洋戦争末期と終戦直後に発生した東南海・南海道地震でした。詳しくしらべると今後30年間に同じ様な地震が発生する確率は30%くらいとされています。生徒のみなさんが生きている今後50年くらいの間に発生する確率は60〜70%くらいです。


 では東海地震はどうでしょうか。終戦前後の東南海・南海道地震のときにすべらなかったのが東海地域が、いつすべってもおかしくないというのが東海地震発生の根拠でした。でも、それからずいぶん時間がたつのにまだ地震が起きません。このことについてはいろいろな説があって、まだ確定していません。ただ東海地域ではマントルが日本列島を引きずり込む早さが遅いのではないかという考えを支持する観測データが出てきています。もし、それが正しいとすると東海地震は結局起きないのかも知れません。けれども次の日本列島南岸で地震が起きるときには、かならず東海地震の場所でも地震が発生することは確かです。


 地震を起こす力は、同時に景色の美しい日本列島も作っています。みなさん、地球のことを勉強して、地震とのつきあい方を見つけだしてください。


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