火山の形と噴火様式

 東伊豆単成火山群は,陸上部分だけで60個あまりにおよぶ小さな火山の集合体です.富士山や箱根なら火山らしい形をしているけれども,伊豆半島ではいったいどこに60個もの火山があるのか,いぶかる人がいるかもしれません.伊東市にある大室山・小室山の両火山は美しい円錐形をしており,山頂にはすり鉢状の火口をもち,しろうと目にも火山とわかるものです.
 大室山や小室山のようなタイプの火山を,スコリア丘とよびます(写真).スコリアとは,ちょうど軽石をまっ黒にしたような穴だらけの噴石のことを呼び,スコリアがつもってできた山をスコリア丘と言います.スコリア丘は,伊豆大島火山の1986年噴火のときに三原山火口でみられたような,粘性が小さくて流れやすい溶岩が噴水のように吹き上がる噴火(溶岩噴泉)によってできます.スコリア丘と対照的なでき方をするのが,溶岩ドームです.溶岩ドームは,粘性が大きくて流れにくい溶岩が火口のまわりに盛り上がってできるものです.東伊豆単成火山群の代表的な溶岩ドームとしては,天城山北東山腹にある矢筈山やその北西方にある岩ノ山があります.

写真:大室山スコリア丘.

 これらの比較的目立つ山以外の東伊豆単成火山は,概して小型であるため人の目につきにくくなっていますが,小さな円形または円錐形の丘,あるいは円形の凹地としてみとめることができます.たとえば,伊東市街の南方にある円形の小さな湖,一碧湖もそのひとつです.この湖は激しい水蒸気爆発によってできた爆裂火口(マール)に水がたまったものです.同様な噴火は,三宅島火山の1983年噴火のさい,島の南端にある新澪池(しんみょういけ)火口で目撃されました.東伊豆単成火山群に属する火山は,伊東市だけでなく,さらに西方あるいは南方の中伊豆町,東伊豆町,天城湯ケ島町,河津町にも数多く分布しますが,天城山系の急峻な山はだがそれら小型の火山の姿を目立たなくしています.



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