火山灰から知る噴火の歴史

 せまい地域に多数の火山がある場合,それらの噴火した順番,年代,噴火間隔はどのようにして決めることができるでしょうか?
 火山の噴火史をしらべるためには,火山灰編年学(テフロクロノロジー)という方法がおもに用いられます.火山灰編年学とは,火山の噴出した火山灰の重なる順番をしらべることによって,噴火順序や年代を知る方法です.雲仙・普賢岳での例からもわかるように,いったん火山の噴火がはじまると火山のまわりの地域には火山灰が降りつもり,灰色一色の世界となってしまいます.やがて噴火がおさまると,こういった火山灰は地中に火山灰層として埋もれ,火山噴火の記録として残ることになります.伊豆東部火山群に属する火山の多くは,噴火のさいに多かれ少なかれ火口から火山灰を噴出しています.これらの火山灰は,噴出した火山によって色や組織や含まれる鉱物などに特徴があり,どの火山から噴出したものかを容易に区別することができます.野外地質調査をおこなうことによって,このような火山灰を地層中から見つけ,それぞれの火山灰層がどのような順番で重なっているかをしらべることにより,その近くにある火山の噴火順序を決めることができます.
 また,伊豆半島には,伊豆半島以外にある火山の大噴火によってもたらされた火山灰も何枚か分布しています(写真).

写真:遠方の火山から伊豆半島に飛来した火山灰の層.明るい帯が火山灰層.

このような火山灰は日本の広い範囲をおおっているため,その特徴や噴火年代などがよく研究されています.九州鹿児島湾内にある姶良(あいら)火山で2万6000年前におきた巨大噴火の産物であるAT火山灰,伊豆半島の北側にある箱根火山で5万2000年前におきた巨大火砕流の火山灰などが伊豆半島に飛んできており,これらの火山灰と伊豆東部火山群の火山灰との上下関係をしらべることにより,伊豆東部火山群の個々の火山の年代をある程度明らかにすることができます.
 以上のような方法を使い,野外調査を根気よく繰りかえすことによって,伊豆東部火山群の噴火史が明らかにされています.



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